無力な僕らの世界と終わり




案内されたのは、大きなお座敷。

襖で二部屋に分かれるようになっている。



「男の子と、女の子がいるからねえ。
寝るときは、ここを仕切ったらいいよお」



そう言ってあたし達の世話を妬いてくれるのは、さっきのおばさん。



「さあさあ、麦茶でもどうぞ。
一休みしたら、早速、田んぼ行くべなあ」


お婆ちゃんが麦茶とお菓子をお盆に乗せて運んできた。



「ありがとうございまあす」


あたし達は丸いちゃぶ台を囲んで、早速お茶とお菓子をいただく。
お菓子は、薄焼きのかりんとうだ。


お父さんもお母さんも、住んでる町の出身だから、あたしには田舎がないけど。
田舎のおばあちゃんちって、こんな感じなんだろうなあ、と思う。

かりんとうは甘くて、麦茶にも少し砂糖が入っていた。

その甘さが、身体にも心にも染みる。


ちらり、と、ほとんど向かいに座ってる瑠樹亜に視線をやると。
パリパリ、と、少しずつ、かりんとうを食べている。


その仕草が、小動物みたいで何だかかわいい。

お金持ちのお坊っちゃんは、かりんとうなんか食べないだろうなあ。


瑠樹亜と言えば、やっぱりチョコレートのイメージ。

屋上で一緒に食べた。
甘い甘いチョコレート。


かりんとうを食べる瑠樹亜なんて、こんな機会でもなければ絶対に見ることはなかったと思う。

ああ、同じ班にしてくれた、神様に感謝。




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