無力な僕らの世界と終わり




一息ついてから、しおりで日程をチェックし、ジャージに着替えて田んぼへ行く。


田んぼへは、歩いて少し。

道具係の山本が、人数分の鎌を持って行く。


のんと向井、山本とふざけながら歩いた。
木村さんのお爺ちゃんが、「元気でいいなあ」と、眩しそうに目を細める。


後から付いてくる、瑠樹亜と弓子さん。


猫背でふわふわしながら歩く瑠樹亜。
時々、ぼんやりと空を見上げた。

あたしはその姿をこっそりと振り返りながら歩いていたけど。
瑠樹亜はびっくりするくらい田園風景が似合わなかった。

瑠樹亜自身も、居心地が悪そうにしている。


木村さんの田んぼは、いつも機械で稲刈りや脱穀をするらしいけれど。
あたし達、修学旅行生のために、小さな別の田んぼを用意してくれていた。

そこは、小さな三角形の田んぼで。
金色の稲穂が、大きく垂れ下がっていた。


「おお! 米!」


男子二人は意味もなくはしゃぐ。

修学旅行って、それだけで楽しいんだ。

何にも特別なことなんかなくても。
本当に、楽しい。



『世界のおわり』のことを思い出さなければ。

あたしだって本当はもっと、楽しめるはずなんだけど。





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