無力な僕らの世界と終わり




木村のお爺ちゃんと、田んぼで先に作業をしていたおじさんに、丁寧に教えてもらいながら稲刈り体験をする。


ぐうっと力を込めて稲の束を握ると、すぐに腕が痛んだ。


ザクザクザクッと、鎌が稲を切り込んでいく。
その感触が、何だか気持ちよかった。



「わあ! すごいねー!」



スイスイと鎌を扱う男の子達に、感嘆のため息が出た。


向井と山本は、やっぱりバスケ部で鍛えてるだけあって、次々と稲を刈っていく。


けど。

同じ男の子でも、瑠樹亜はへっぴり腰だ。

その内に露骨に嫌な顔をして、土手に座り込んでしまった。



「疲れたかあ?」と、木村のお爺ちゃんが声をかけても、瑠樹亜はフイッとそっぽを向いただけで、返事もしない。



「ごめんなさい。
あの人、無愛想なんです」


あたしが見かねてフォローすると、
「うるせ」
と呟く瑠樹亜の声。

嬉しくて、益々ちょっかいを出したくなる。



「ほら、もうちょっとやろうよ!
瑠樹亜!」


「は?」


どさくさに紛れて、いつもは君づけの瑠樹亜を呼び捨て。

そのくらい、いいよね。
しばらく、会えなくなるんだから。


「疲れたの?」


その上、図々しく隣に座り込んだ。


「別に」


無愛想な、瑠樹亜の声。




< 163 / 215 >

この作品をシェア

pagetop