無力な僕らの世界と終わり
木村のお爺ちゃんと、田んぼで先に作業をしていたおじさんに、丁寧に教えてもらいながら稲刈り体験をする。
ぐうっと力を込めて稲の束を握ると、すぐに腕が痛んだ。
ザクザクザクッと、鎌が稲を切り込んでいく。
その感触が、何だか気持ちよかった。
「わあ! すごいねー!」
スイスイと鎌を扱う男の子達に、感嘆のため息が出た。
向井と山本は、やっぱりバスケ部で鍛えてるだけあって、次々と稲を刈っていく。
けど。
同じ男の子でも、瑠樹亜はへっぴり腰だ。
その内に露骨に嫌な顔をして、土手に座り込んでしまった。
「疲れたかあ?」と、木村のお爺ちゃんが声をかけても、瑠樹亜はフイッとそっぽを向いただけで、返事もしない。
「ごめんなさい。
あの人、無愛想なんです」
あたしが見かねてフォローすると、
「うるせ」
と呟く瑠樹亜の声。
嬉しくて、益々ちょっかいを出したくなる。
「ほら、もうちょっとやろうよ!
瑠樹亜!」
「は?」
どさくさに紛れて、いつもは君づけの瑠樹亜を呼び捨て。
そのくらい、いいよね。
しばらく、会えなくなるんだから。
「疲れたの?」
その上、図々しく隣に座り込んだ。
「別に」
無愛想な、瑠樹亜の声。