無力な僕らの世界と終わり
脱穀の作業は楽しかった。
予め乾いた稲を用意してくれていた木村さん。
刈った稲や、脱穀したお米は、白米にして学校に送ってくれるらしい。
木村さんから説明を受け、かわりばんこに機械に稲を入れていく。
昔からの足踏み脱穀も体験した。
くるくる回る機械を見ていると、何だか気持ちが和む。
パラパラと稲からお米が落ちてくると、それを手のひらに乗せてみた。
心なしか、暖かい。
……こんな風に。
こんな風に、瑠樹亜のことも。
稲からふるい落としてあげられればいいのにな。
しがらみから自由になって。
堅い皮を剥いで。
ピカピカに磨いて。
真っ白な瑠樹亜にして。
新しい世界に。
解き放してあげたい。
美山さんのことも。
できるなら。
……なんて。
そんな、ガラでもない。
詩人のようなことを考えてみる。
気持ち悪いな。
あたし。
今さらだけどさ。
昼食はまた、田んぼの土手に座ってみんなで食べた。
瑠樹亜は嫌いだと言ったおにぎりを3つも平らげて。
向井と山本は4つずつ食べた。
山本と瑠樹亜は特別話をすることもなかったけど。
必要最低限の会話はあるみたいだったし、山本はよく笑っていて、険悪な雰囲気でもなかった。
ガキっぽいのに、山本って案外大人なのかも。
ちょっとだけ、山本のことを見直したりした。