無力な僕らの世界と終わり
午後はみんなで河原へ出る。
大きな川で、水が綺麗なので釣りが楽しめるらしい。
釣り好きな向井と山本は、大張りきりだ。
歩いて10分くらいで大きな河原へ着いた
上流の方なので、大きな岩がゴロゴロ転がっている。
その岩の一つに座り込んで、向井と山本は早速釣りを始めてしまった。
空は青く晴れていたけれど、すごく風が冷たい。
河の流れは緩やかに見えるけれど、所々、水しぶきか上がっている。
こんなに寒いのに、魚なんかいるのかな。
まあ、ワイワイやりたいだけで、魚を釣りたい訳じゃないのかも。
このポイントがいい、あそこがいい、と。
二人は楽しそうだ。
「もう!
騒いだら危ないよお!」
隣にいたのんが向井のところへ駆けて行ったので、あたしも瑠樹亜の姿を探す。
一番後を歩いていたけど。
一緒に河原へ来ているはず。
キョロキョロ見回すと、ずっと遠くに、木陰で文庫本を開く瑠樹亜の姿が見えた。
そこに近付こうと歩いていると、弓子さんに声をかけられた。
寒いので木村さんの家に先に帰っているとのこと。
班長にはあたしから伝えておくよ、と言って了承する。
正直、ここにいても弓子さんは退屈だろうと思った。
本当は山本の側にいたいのかもしれないけど。
昨日の今日ではきっと勇気がいる。
でも。
……弓子さんはいい。
こらからまだまだ、山本に近付くタイミングはいくらでもあるんだから。
仲良くなれるかもしれない。
同じクラスなんだし。
努力は必要だろうけど。
でも、あたしは。
あたしは……今日しかない。
この修学旅行が終わったら。
しばらく瑠樹亜に会えなくなる。