無力な僕らの世界と終わり



それから美山さんと、色んな話をした。



本当のお父さんの話。


とっても背が高くて。
優しくて格好よくて。

誰よりも美山さんを大切にしてくれていたこと。


時々贈り物をくれたけど。

本当のお父さんは、新しい土地で結婚して。
子供ができて。

美山さんは、「もう私のことは忘れて」って、言ってしまったこと。

それから、贈り物が届かなくなってしまったこと。



お母さんは本当のお父さんを愛していたけど。

今の父親に引き離されて、離婚させられて。

今は洗脳されるように生きていること。


二人の間には子供ができなかったから。
美山さんにはいずれ、病院の中から結婚相手が決められてしまうこと。

そのために。
病院の中で下らない争いごとが起きていること。



「私は、大人達の都合で使われる駒みたいなものだけど。
その駒が欲しくて、躍起になっている大人達もいる。

でも、利用されるのは、仕方のないことだって、思ってる。

私には、それぐらいしか。
存在価値なんかないんだから」


美山さんはそう言って、何度も悲しい顔を見せた。


陶器のような肌からは、今にも悲しみと憎しみが溢れてきてしまいそうで。

いつか割れてしまうんじゃないかって。

胸が締め付けられる。





< 187 / 215 >

この作品をシェア

pagetop