無力な僕らの世界と終わり
それから美山さんと、色んな話をした。
本当のお父さんの話。
とっても背が高くて。
優しくて格好よくて。
誰よりも美山さんを大切にしてくれていたこと。
時々贈り物をくれたけど。
本当のお父さんは、新しい土地で結婚して。
子供ができて。
美山さんは、「もう私のことは忘れて」って、言ってしまったこと。
それから、贈り物が届かなくなってしまったこと。
お母さんは本当のお父さんを愛していたけど。
今の父親に引き離されて、離婚させられて。
今は洗脳されるように生きていること。
二人の間には子供ができなかったから。
美山さんにはいずれ、病院の中から結婚相手が決められてしまうこと。
そのために。
病院の中で下らない争いごとが起きていること。
「私は、大人達の都合で使われる駒みたいなものだけど。
その駒が欲しくて、躍起になっている大人達もいる。
でも、利用されるのは、仕方のないことだって、思ってる。
私には、それぐらいしか。
存在価値なんかないんだから」
美山さんはそう言って、何度も悲しい顔を見せた。
陶器のような肌からは、今にも悲しみと憎しみが溢れてきてしまいそうで。
いつか割れてしまうんじゃないかって。
胸が締め付けられる。