無力な僕らの世界と終わり



瑠樹亜の状態が落ち着くと。
今度は看護婦さんが、警察と一緒に色々話を聞きに来た。


なぜあんな所から落ちたのか。
なぜあんな所にいたのか。
何をするつもりだったのか。

ものすごく遠回しに。
時にはハッキリと。


瑠樹亜は何も答えなかった。

ただ、ぼうっと……
空(くう)を見詰めていた。




……命を取り留めた代わりに。

美山さんは多くのことを露出させてしまった。


美山さんの体には、虐待による無数の痣や傷があり。
長年放置されたと思われる火傷や、骨折の痕もあったという。



そうして……

美山さんは、妊娠していた。



赤ちゃんは、土手から転げ落ちた衝撃で命を亡くしてしまった。

あたしが救急車の中で見ていた美山さんの出血は。
亡くなった赤ちゃんの、最後の叫びだったのだ。


あたしはそれを聞いて。

涙が止まらなかった。


美山さんは知っていたのだろうか。


知っていたからこそ……

……二人で行きたかったのだろうか。






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