無力な僕らの世界と終わり




後に。

子供の父親は、担任の斉藤先生だと、美山さんは告白した。


父親から虐待を受けていたこと。
それに気が付いた担任の斉藤先生が、力になるといいながら、脅すようにセックスを強要してきたこと。

それが日常的に繰り返されてきたこと。
そのうちに、体の変化に気が付いて、怖くなってきたこと。


誰にも相談できなかったこと。
誰かに言えば、父親に殺されると思っていたこと。

殺されるくらいなら。
自分で死を選ぼうと思ったこと。



この生活を……

いつも早く終わらせたいと思っていたこと。



身体中に残る虐待の痕と、亡くなってしまった赤ちゃん。

美山さんの告白は、真実味を帯びて。
すぐに警察が動き出した。


そうして、身体の容態が落ち着くと。
美山さんは同じ病院の精神科に移された。


毎日毎日、「家に帰るくらいなら、殺して欲しい」「死にたい」と懇願していたらしい。


美山さんは真実を告白したことで。
塞き止められていたダムが破壊するように、感情を吐き出すことができたのだと思う。



こうして、美山さんのお父さんは傷害の罪で、担任の斉藤先生は強制猥褻罪で、警察に逮捕され、この小さな街は大騒ぎになった。

病院にも学校にも。
マスコミが押し寄せた。


大病院の医院長の虐待と。
教師の強制猥褻。

退屈をもて余している人達の、格好の餌食になった。




< 208 / 215 >

この作品をシェア

pagetop