無力な僕らの世界と終わり
後に。
子供の父親は、担任の斉藤先生だと、美山さんは告白した。
父親から虐待を受けていたこと。
それに気が付いた担任の斉藤先生が、力になるといいながら、脅すようにセックスを強要してきたこと。
それが日常的に繰り返されてきたこと。
そのうちに、体の変化に気が付いて、怖くなってきたこと。
誰にも相談できなかったこと。
誰かに言えば、父親に殺されると思っていたこと。
殺されるくらいなら。
自分で死を選ぼうと思ったこと。
この生活を……
いつも早く終わらせたいと思っていたこと。
身体中に残る虐待の痕と、亡くなってしまった赤ちゃん。
美山さんの告白は、真実味を帯びて。
すぐに警察が動き出した。
そうして、身体の容態が落ち着くと。
美山さんは同じ病院の精神科に移された。
毎日毎日、「家に帰るくらいなら、殺して欲しい」「死にたい」と懇願していたらしい。
美山さんは真実を告白したことで。
塞き止められていたダムが破壊するように、感情を吐き出すことができたのだと思う。
こうして、美山さんのお父さんは傷害の罪で、担任の斉藤先生は強制猥褻罪で、警察に逮捕され、この小さな街は大騒ぎになった。
病院にも学校にも。
マスコミが押し寄せた。
大病院の医院長の虐待と。
教師の強制猥褻。
退屈をもて余している人達の、格好の餌食になった。