無力な僕らの世界と終わり
お母さん?
瑠樹亜はバス停に立っている。
さらさらと髪がなびいて。
涼しそう。
(けっこう暑いけど)
うわお!
なんて偶然!
瑠樹亜も早退?
さっきのチョコレートのお礼を言って。
また少しお近づきに!
なんて、美山さんへのイライラも忘れ、徐々にテンションが上がる。
あたしが瑠樹亜に猪突猛進していると、
「瑠樹亜!」
瑠樹亜を呼ぶ、女の声。
真っ赤な、高級感のある車が瑠樹亜の前に止まり、そこから髪の長い女性が顔を出す。
あたしの所から顔は見えないけれど、髪は柔らかくウェーブがかかっていて。
瑠樹亜を呼ぶその声には、親しみが込められている。
瑠樹亜はそれを無視して歩き出した。
「どこ行くの? 帰るわよ。乗りなさい」
女性の声はよく通る。
(あたしが無意識に聞きのがさまいとしているからか)
けれども瑠樹亜は、車に背を向けたままだ。
どうやら乗るのを拒否しているらしい。