無力な僕らの世界と終わり





スイスイと自転車は進む。

大きな通りを抜けて、小路に入ればすぐに公園が見えるはず。


あ、あそこだ。

公園の側で、三角形に聳える大きな家。
(というかむしろ屋敷?)


表札を確認する。

『Aida』

お洒落なローマ字が並んでいた。



「まじでか……」


ここ、家だったんだ。
あたし、何回か通り過ぎてたけど、レストランか何かだと思ってた……


広い庭は丸太の柵で囲われ、軽井沢のお洒落な別荘のような佇まい。
玄関へと続く石畳の脇には、ハーブか何かの可愛らしい花が咲いている。

多分、あれは薔薇のアーチ。
いかにも金持ち風な白いテーブルとチェアーが、芝生の上でピカピカ光っている。


「うわあ……」


ため息が出る。

あのガレージには赤いベンツが停まっているのだろう。
(今はシャッターが下りていて見えないけど)





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