無力な僕らの世界と終わり
広い庭に感嘆のため息がを漏らしながら、石畳をそろそろと歩いて玄関にたどり着いた。
ああ、指が震える。
すう、はあ。
深呼吸をして。
ピンポーン。
(実際はピンポンではなく、ティロリロリローンと素敵な音楽が鳴ったけど)
「…………」
返答なし。
もう一度。
ピンポーン。
(同じく、ティロリロリローンと音楽)
「…………」
やっぱり、返答なし。
なんだ。
いないのか。
緊張して損しちゃった。
てか、しおり、どうしよう。
あたしが踵を返そうとすると、何やら、うっすらとだけれど、音楽が聞こえる。
「………?」
バイオリン?
ピアノ?
多分、わからないけれど、クラシックだ。
ん? オペラ?
笛が鳴っているような、伸びのよいソプラノの声。
なんだ。
いるんじゃん。
音楽が大きすぎて、インターホン聞こえなかったのかな。
てか大音量でオペラって、どんだけ金持ちな雰囲気なのよ。