無力な僕らの世界と終わり






呆気にとられているあたしに一瞥をくれ、美山さんは最後のたこ焼きを口に入れる。

それからコクコクっと、お茶を飲んで。



「瑠樹亜から、聞いたよ?

瑠樹亜の秘密、見ちゃったんだって?」



何でもないことのようにそんなことを言うから。



「ぶっ」



あたしは口からたこ焼きが飛び出そうになる。




「瑠樹亜とお母さん。
……凪(ナギ)さんの、秘密」




………


……秘密。



瑠樹亜の膝の上に乗った、白い太股。

イタリアのオペラ。


あの時の光景がフラッシュバックしてきて、あたしは言葉に詰まる。


凪さんって、いうんだ。
あの、綺麗な人。


て、てか。
やっぱりお母さんなの?


背中に、変な汗が滲んできた。




「本当のお母さんじゃないけどね。

瑠樹亜のお父さんの、新しい奥さん」



さらり、とそんなことを言ってしまって。
けど、相変わらず、美山さんには何でもないことのようで。





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