だって好きなんだもん
「え、ほんと!?」
「遅ぇよ馬鹿! ……後で覚えとけよ」
そう言って、響ちゃんは黙々と食べ始めた。
――こ、怖いよぉ。仁王様が目の前にいるよぉ。
私は涙目で震えながら美味しいグラタンとスープを食べ続けた。
響ちゃんはなんだかんだ言って絶対にご飯は残さないので、私の作ったものを綺麗に食べてくれる。
今日のほうれん草とベーコンのグラタンはもちろん、スープはお代わりまでしてくれた
よかった。
とりあえず食べてくれた。
食べ終わったのを見て目を合わせるのが怖い私は、そそくさと食器を下げると先に洗ってしまおうと決意して、スポンジを泡立て始めた。
それなのに……背後からそっと忍び寄ってきた響ちゃんが、ピタッと私の後ろに立つと両手が泡だらけですでに塞がっている私の腰に両手を巻きつけてきた。
「響……ちゃ」
「お前、覚悟できてんだろうなぁ」
「な、なんの?」
傍から見たらすごくラブラブな光景だろうけど、私の背筋には冷や汗がタラタラ流れていた。
それから私が最も弱い、低くて甘いボイスを右耳の傍で響かせる。
「もちろん、俺の言いなりになる覚悟に決まってるだろ?」
さも当然かのようにそう告げる響ちゃん。
――私、いつも言いなりじゃないですか?
それにそんな話、聞いてなかったと思うんだけど!?
なんて思うけど、私に拒否権はない。
「ふうん? そういう態度でいいんだ」
ただ押し黙る私にそう囁く響ちゃん。
ビクッと震える私の手を取って、じゃーっと勝手に洗い流すと、私の抵抗なんてお構いなしに私を抱き上げて恐ろしい言葉を吐いた。
「じゃ、このまま行くか」
かくして私は、抱っこされたまま風呂場へと連れて行かれてしまった。