だって好きなんだもん
 気が付けば、目の前はずらずらと立ち並ぶラブホだらけの通りになっていた。


 客引きのお兄さんがたくさん並んでいて


 「どうっすか~」


 とニコニコしながら私達を誘っている。


 私はその様子にビクビク怯えているのに、八木先生はずんずんと突き進んでいく。


 こんなところまで流されて来たけれど、流石の私も困惑が隠せなくなってきた。


 「ちょ、先生! 帰りましょう」

 「え~行こうよ菜摘ちゃーん」

 「こ、困りますってばっ」

 「まぁまぁ硬いこと言わないで」


 完全に正気を失いつつあって、私の肩に食い込む指の力も衰えない。



 ――どうしようっ!? 響ちゃん、助けて!!



 そう祈ってギュッと目を閉じる。


 たけど、そんなマンガのように都合よく響ちゃんが現れる訳がなくて。


 しかも目を開いたその目の前には、マンガのように助けに来るどころか……


 私の大好きな響ちゃんと


 副主任の田中美希先生が


 並んでラブホテルに入るところを見ることに、なっちゃったんだ。
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