だって好きなんだもん
 響ちゃんのことは大好きだし、私のことをすごく大事にしてくれてるのはよく分かってる。


 いつも愛しそうに見つめてくれる眼差しも。


 優しい口づけも。


 ちょっと馬鹿にした顔も。


 意地悪をしたりすることも。


 全部全部、私への愛を感じてた。


 だから、響ちゃんのこと信じてる。



 でも、でもね……



 もう4日もまともに会えなくて、寂しくて寂しくてたまらない私には、もう辛くて悲しくて仕方ないんだよ?


 それに、目の前ではっきりとそんなとこに入って行くとこ見ちゃったら、それは否定できないし、目に焼き付いて離れないもの。



 こんなの、こんなのってないよぉ。



 ぽたぽたと涙が流れて止まらなくなって、私は立ち止まってしまった。


 流石に私の異変に気付いた八木先生は


 「な、菜摘ちゃん!? どうしたの?」

 「ごめ、なさ……私、もう帰ります」

 「え? え?」

 「ほんと、すみま、せんっ!」


 私は突き飛ばすように八木先生から体を剥がすと、訳も分からず走り出して気がつけば三角公園を過ぎて電車に乗っていた。


 電車でもぼろぼろ涙を流している私は、明らかに不審者だろうけど、そんなこと考えられるほど私は正気じゃなかった。


 泣いて泣いて、今響ちゃんの腕の中に田中先生が居るのかと想像しただけで気が狂いそうになって。


 そしたらまた涙が止まらなくなって、おかしくなりそうだった。


 ううん。おかしくなってた。


 響ちゃんの笑った顔を浮かべるたびに、田中先生と歩く姿も一緒に浮かんでそれが消えない。


 田中先生は美人だし35歳で、すごくしっかりしていて大人だし。


 響ちゃんにはあんな人の方が私なんかより似合ってるに決まってる。


 だけど、だけどっ!


 あの温もりを、誰にも渡したくないのっ


 渡したく、ないよぉぉ……




 私は響ちゃんを想って、一晩中泣きじゃくった。


 泣いて泣いて、朝が来たらものすごく不細工になっていた。


 慌てて冷やしたから少しマシだったけど、目が腫れてるのは一目瞭然で。


 だけど今日も1限目に授業があるから行かなくちゃ。


 私は重い足を引きずるようにして、今日も学校へ向かった。
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