だって好きなんだもん
「今日先生、おかしいよー」
「なんか、目とか腫れてねぇ?」
「あ、まさか彼氏にフラレたとか!?」
「やべ! まじで!?」
「俺、菜摘ちゃんならいいのに~」
「きゃはははっ」
私を無視して、クラス内は大盛り上がりになってしまって収集がつかない感じになっていた。
けれど、私はそんな生徒たちに気遣える余裕は全然なくて、「彼氏にフラれた」というフレーズで脳内が埋め尽くされた。
「ひっく……ひっ、うぅ」
止めようと思うのに止まらなくて、私は教壇で泣きだしてしまいクラスのみんなは一斉に静かになった。
「ふぇ……ひぃぃんっ」
ぼろぼろ泣きだしたら止まらなくなった。
やっぱり私って振られたってことになっちゃうのかな?
なにも言われなくて、もう終わりってことなの?
そう思うともう心が限界で、押さえていた涙がまた止まらなくなって、頬を伝った。
クラスの大騒ぎから一転して沈黙……そして聞こえる啜り泣きにおかしさを感じたのか、響ちゃんが隣のクラスから駆け付けてきて、扉を開けた。
室内を見るなり、私が教壇で泣いているおかしな状況に気付き、つかつか駆け寄ってくると
ぎゅうっ
そのまま私を抱きしめてくれた。
――へっ? へっ?
なんで私、こんなとこで抱きしめられてるの?
困惑でいっぱいの私をよそに、響ちゃんはものすごい鬼の形相で
「誰が俺の女泣かしたんだよ、こらっ!」
ドスのきいた声で叫んでいた。
しーん。
響ちゃんに抱きしめられた私にどよめいていた室内は再び静まって、生徒は全員固まっていた。
流石にこのままじゃいけないと思ったけど、まだ混乱中の私は
「響ちゃんっ、違うのっ」
うっかり、貝塚先生と呼ばずに響ちゃんって呼んでしまった。
すると響ちゃんは私を見下ろして、目元をぬぐってくれて
「馬鹿、違わねぇだろ? こんなに泣いて」
「だ……って、響ちゃんが、響ちゃんが」
「お前、もう黙れ」
そう言って、生徒の目の前なのに響ちゃんは私の唇をきつく塞いだ。