だって好きなんだもん
「ははっ。ホントに春日井先生は面白い人ですね」
「そうですか?」
「そんなところが、可愛いですよ」
か、可愛いって……ありえないでしょ。
人気者の貝塚先生にそんな発言をされてますます赤面した。
だけど、先生は赤面する私なんか無視して私の膝に目を向ける。
ジッと見つめた後、救急箱の蓋を開けてササッとコットンを取り出すと、2枚を手に取って洗面台で湿らせてきた。
「ちょっとシミますよ」
予想はしていたけれど、それを私の傷口に向けてあてるとトントンと優しくたたき込んで傷口の汚れを取ってくれる。
汚れといっても、私はジャージを着ていたから大したことはない。
しかし……なんでなんだろう。
「あの、先生?」
「はい」
わざわざ聞かなくてもいい気がするけれど、気になることは解決したい主義だ。
「なんでマキロン使わないんですか?」
「え? だって味がしたら嫌でしょう」
「あ……じ?」
「えぇ。舐めるときにね」
「へっ? ……んっ!」
そのとき私はコットンからシミ出た水の冷たさに耐えていたはずなのに、生温かくて柔らかい感触が膝に感じられて声を詰まらせた。
「せ……ん、せっ!? 何す」「治るんでしょ? こうすると」
言いながらぺロリと舌を私の傷口に這わせてくる。
――確かに言ったけど! ほんとにやる!?
心中のツッコみはお構いなしに、舌先に触れられるたびにゾクっと背筋に何かが走って、私は必死に何かに耐えるように座布団を握りしめた。
幾度となく舐められ、その度に
「ふっ……ん、んっ」
私は妙な声が出そうになるのを耐えた。
気付いたときには、私は先生の右肩に顔を埋めて大きく息をついていた。
ピチャ……
と音がして、ようやく私の膝から貝塚先生の唇が離れた時には、私はもうくにゃくにゃだった。
「よくなりました?」
そう聞いてくる貝塚先生から慌てて離れると黙ってコクコクと頷いた。
もう顔は爆発するんじゃないかってくらい真っ赤だ。
そんな状態の私を涼しい顔で見て
「それはよかった。じゃあ、私はそろそろ点呼確認の合図に回るので、先生も落ち着いたらココを出て担当部屋をお願いしますね」
にこりと微笑むと、そう言って立ち去って行った。