だって好きなんだもん
 部屋に入るとそっとベットの縁に下ろされた。


 生徒の部屋と違い、先生の部屋は個室になっていて簡易ベットが備え付けてある。


 私がさっきの恐怖を思い出して震えていると、膝立ちをして正面に居る貝塚先生がギュッと抱きしめてくれた。


 「悪い。もっと早くに気付いてやれなくて」

 「い、いえ! 私が不甲斐ないばかりに……ご、ご迷惑かけてすみませんでしたっ」


 腕の中にすっぽりおさまりながら私は謝罪する。


 全く持って私の警戒心がないばかりに起きた出来事で、助けてくれた貝塚先生に何の非もない。


 「いや。春日井先生みたいなの、生徒がほっとくわけないの読めたのに。ほんとごめん」


 さっきは、すごく丁寧に喋ってくれていたのに今の貝塚先生はなんだか親近感のある、普通の喋り方だ。


 「あのっ、私ほんとに!」

 「もう黙ってろ」


 そう言うとさらにギュッと抱きしめられて、このときさっきのアレコレが思い出されてまた顔が熱くなった。


 そもそも、なぜ私は貝塚先生に抱きしめられているの? 


 そんな疑問が浮かんで、より一層急に心臓が早鐘を打って治まらない。



 ドキドキドキドキ……


 でもそのせいで、いつの間にか震えが治まっていた。


 そしていつまでも止まらないドキドキ。


 私はドキドキを隠したくて、抱きしめてくれている先生の胸にそっと顔を埋めていたら


 「落ち着いた……か?」


 無理矢理体を剥がされて、覗き込んで見つめられていた。


 その見つめる瞳があまりにも真剣で、ドキッとして私は顔を赤くするばかりだった。


 「ん。大丈夫だな」


 そんな私を見てか、大丈夫だと判断してくれたらしい。


 けれど先生は私を緩く抱きしめたまま離してくれない。


 「あ、あの。そろそろ」


 離してほしい……そう言おうと思ったのに


 「あぁ宴会か? 春日井先生遅いから先やっといてって言ってある。みんな出来あがってるだろうから大丈夫だ」


 なんて予期せぬ返答が返ってきた。


 ではなくて


 「あの、貝塚先生」

 「だーっ!!」


 私が口を開こうとしたら貝塚先生の叫びで消された。


 「あのさ、春日井先生」

 「はい……?」

 「こんな時に悪いけど言わせてくれる?」

 「なんでしょうか」

 「俺の彼女になって」

 「は……ぇぇえ!?」


 私は驚きのあまり、思わず貝塚先生の両肩を両手で押して体を離した。


 い、一体何を言われたの私!?
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