未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2

「これ、さっき買ったCD?」

「そう」

「高坂君、ロック好きだもんね。わたし、ライブ観にいったんだよ。高坂君たちの」

「それはどうも」

「カッコ良かったよ~。曲はわかんないのが多かったけれど。でも、すごくのれたよ」

「なら、良かった」


会話が途切れる。

無理もないよな。

いくら、俺のボタンを持っている女だとしても、まともに話すのは今回が初めてだし、不思議なほど上野に対して聞きたいことが出てこなかった。


「高坂君、『恭』って呼んでもいい?」

「別に構わないよ」

「みんな、『恭』って呼んでたでしょ?高校のとき。わたしもそう呼びたかったんだ」

「わざわざ聞かなくても、お好きにどーぞ」

「えへへ、やったね」


上野は携帯電話を取り出し、俺に向けている。


「恭のこと、撮ってもいいよね?」

「だめー」

「え?だめなの?」

「今、運転中」


言い終わらないうちに、上野の携帯電話から音がした。


「横顔ゲット~」


嬉しそうに携帯電話を操作している上野の存在に救われるような、それでいて乗せなきゃ良かったかも、なんて思っている自分がいて、心中複雑だった。


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