未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
車に乗る。
今度は当たり前のように上野が助手席に乗る。
「で? どこに付き合えばいいの?」
なるべく感情を出さないように心掛けた。
ほんとうなら、無理やりでも携帯電話を取り返したい。
でも、パスタが出てくる前のあの上野のはしゃぎ振りを見た後、今の沈みかたを見ると、やはり俺が悪いようにも感じたから。
上野は、言いにくそうに下を向いていた。
俺はハンドルに手をかけ、そこに顎を載せるようにして、上野の次の言葉を待っていた。
車内の時計は12:50になっていた。
綾のメールから30分くらい経ったかもしれない。
抑えていても、イライラしてくる。
「あのさ、悪いけど、俺の携帯のマナーモード切っておいて。仕事絡みの電話が入っても気付かなかったら、後が大変だからさ」
上野は驚いたように顔を上げ、俺を見た。
「わたしが操作してもいいの?」
人の携帯、取り上げたくせに今さら何を…と思いながらも「右の【文字】ってとこ、長押ししてくれれば、解除されるから」と、説明した。
上野は言われたとおりにしてくれた。
「解除したよ」
「サンキュ」
「待ち受け、ハード&ローズなんだね」
「もち」
上野が小さく笑った。
少しだけ険悪さが薄れたよう気がした。