未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
「で、どこ行きたいの?」
上野が少し赤くなり「恭と二人きりになれるところに行きたい」と言った。
俺はハンドルから手を離し、シートにもたれ、小さく笑った。
「今も二人きりじゃん」
マズイ……非常にマズイ展開だぞ、これ。
でも、携帯がないと、綾と連絡が取れない。
冷静になってもう一度考えてみる。
優先順位。
まず、綾に会うこと。
そのためには携帯電話を取り返さなくてはならない。
そのためには上野をこれ以上感情的にはさせられない。
――ってことは、従うべき?
あ~、ごちゃごちゃしてくる。
そのとき、上野の右手に握られていた俺の携帯電話から『星屑恋夜』が流れ出した。
とっさに俺は上野の右手を掴み、携帯電話を取ろうとしたが、そこに上野が顔を押し付け放そうとしない。
「いや!返さない!!」
そう叫ぶ上野の首筋に吸い付いてやった。
驚きのあまり、上野の右手の力が抜けた隙に携帯電話を奪い返した。
気持ちが綾に会うことに向いてしまっていた俺は、『星屑恋夜』のメロディがスイッチとなり、携帯電話を取り返すための手段を選ばなくなっていた。
どうでもいい、とにかく手に戻った携帯電話を見る。
綾からのメールが届いている。