未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
黒磯駅に着いて、駅前に車を停める。
上野は小さくため息を吐き、シートベルトを外す。
「ありがとう。それじゃあ」
「あー、番号教えておく」
苦し紛れに出てきた言葉は、自分の携帯電話の番号だった。
なんか、このままにしてはいけないような気がした。
俯いていた上野は顔をあげて、慌てて自分の携帯電話をバッグから取り出した。
「ごめん、もう一回言って」
俺は二回、繰り返して自分の電話番号を言った。
携帯電話を操作している上野の表情が少しだけ柔らかくなったように感じた。
「わたしの番号も、言ってもいい?」
「あー、じゃあ、登録しとくよ」
俺は携帯電話を取り出し、上野の口にする番号を登録する。
「えっと、同じとこだから、番号でメール出来るね」
「あー、うん。まぁ、気が向いたらメール入れてみてよ」
「いいの?」
「ああ。仕事中に来た電話には出れないけど、メールならいつでもいいよ」
「ありがとう!!」
あまりにも嬉しそうなその声に、俺は今日の自分の行いを反省する。
「その、今日はなんか、ごめんな」
「ううん、わたしのほうこそ、ごめんなさい」
ペコリと頭を下げ、上野は助手席から降りた。
「それじゃ、行くね。ばいばい」
「ああ」
ドアを閉め、上野は交差点のほうへ歩いて行った。
一度振り返り、手を振ってまた歩いていった。
その後姿を、見えなくなるまで、眺めていた。