未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2

9.変化進行形


あと一時間ぐらいあるなぁ。

落ち着かない気持ちを抱えたまま、とりあえず車から降りる。

駅の入り口まで行き、自動販売機でストレートティを買う。

そしてまた、自分の車に戻る。

エンジンをかけ、先ほど買ったCDのジャケットをダッシュボードから取り出し、カーステレオから流れてくる曲を聴く。

落ち着かない――。

CDをH&Rのベスト盤に換える。

シートにもたれ、目を閉じながら曲を聴いていると、初めて綾に会ったときのことが瞼の裏をスクリーンに流れ始めてきた。

淋しげな表情も、悲しげな瞳も、大粒の涙も。

重ねてしまった唇の感触を、驚きの目を、そして別れ際に見せた表情を。

もうあれから3ヶ月も経った。

3ヶ月もの間、綾のことを毎日考えている自分がいた。

言葉にしたくて、伝えられなくて、もどかしい日々を過ごした。

誰かにそこまで想いがいったことは今までなかったかもしれない。

これって結局恋してることになるのかな。

認めたら楽なようでいて、でも明るい先が見えなくて苦笑いする。

『口にしたらおしまい』って可能性が大きいこと、恐れる自分がいる。

そして、『もしかしたら綾だって――』と思わずはいられない自分も確かにいる。


< 31 / 121 >

この作品をシェア

pagetop