未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
9.変化進行形
あと一時間ぐらいあるなぁ。
落ち着かない気持ちを抱えたまま、とりあえず車から降りる。
駅の入り口まで行き、自動販売機でストレートティを買う。
そしてまた、自分の車に戻る。
エンジンをかけ、先ほど買ったCDのジャケットをダッシュボードから取り出し、カーステレオから流れてくる曲を聴く。
落ち着かない――。
CDをH&Rのベスト盤に換える。
シートにもたれ、目を閉じながら曲を聴いていると、初めて綾に会ったときのことが瞼の裏をスクリーンに流れ始めてきた。
淋しげな表情も、悲しげな瞳も、大粒の涙も。
重ねてしまった唇の感触を、驚きの目を、そして別れ際に見せた表情を。
もうあれから3ヶ月も経った。
3ヶ月もの間、綾のことを毎日考えている自分がいた。
言葉にしたくて、伝えられなくて、もどかしい日々を過ごした。
誰かにそこまで想いがいったことは今までなかったかもしれない。
これって結局恋してることになるのかな。
認めたら楽なようでいて、でも明るい先が見えなくて苦笑いする。
『口にしたらおしまい』って可能性が大きいこと、恐れる自分がいる。
そして、『もしかしたら綾だって――』と思わずはいられない自分も確かにいる。