未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2

俺は大きく背伸びをした。

それを見て、ふふっと綾が笑い、同じように背伸びをしていた。


「ハンを押して、家も出て、実家に戻ろうかとも思ったけれど、なんだか情けなくなってきてね。とりあえずホテルに泊まりながら、アパートを探してね。引っ越してきたの。で、引っ越したその夜に、なんだか馬鹿みたいって思っちゃって。二十代のほとんどを一緒に過ごしたのに、別れるのはこんなにもあっけないんだなぁって。あのときの子どもが生きていたら、わたしの今はどんな感じだったんだろうって、考えても仕方ないことまで考えちゃって。そしたら、泣けてきて泣いちゃった。子どもみたいに」


綾は照れくさそうに舌を出して肩を竦めてみせた。

抱きしめたい衝動に駆られながらも俺は欄干に両手をつき、遠くの緑を眺めた。

俺がこの先経験する二十代、綾にとっては過去のこととして話す二十代。

その傷を癒してあげたいと思っても、言葉が見つからない。

正直、結婚だの、妊娠だの、子どもだの、俺にとっては遠すぎる話題に感じる。

痛みがどれほどのものなのかも理解できない。

それほど俺はただのガキ。

でも、なんか言ってあげたい。

なにか――、なにか――。


「――綾、俺と同棲する?」


バカだ、俺。

ほら、綾がきょとんとしている。

いきなりなにを言い出すんだ?!

俺の口は――。
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