未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
19.偶然のこわさ
客席は既に熱気が充満していて暑かった。
ステージの上にいるバンドが自分たちの最後の曲を盛り上げている。
この次がアッシュの番だ。
俺は綾を後方へ連れて行く。
「ここがいちばんいい音で聴けると思うよ」
「そうなんだ? さすがよく知っているのね」
ここでのリハーサルの時もこの位置に立ってメンバーの音を聴いたりした。
他のメンバーもそうだった。
よく俺のやや左前方に康則さんが腕を組んで立ってたのを思い出し、視線を向けると、そこに康則さんが腕を組んで立っていた。
俺は妙に嬉しくなって手を伸ばした。
康則さんがこっちを向く。