未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2


「え?この人って?」


そう言った上野の腕を大輔さんが引き戻そうと引っ張る。


「百合、あっちに行こう」


大輔さんの顔を見ずに上野は手を振り払い、その場に残った。


「大輔さん、約束だよ。いちばん最初の約束」


その言葉で再び伸ばしかけた手を大輔さんは下ろした。


「この人なんだ――。わたし、上野です」


綾の顔をじっと見る上野に綾は軽く頭を下げた後、俺の顔を見て尋ねるように首を傾げた。


「恭の同級生です。河原さんは?」

「えっ?」

「今日も電車で着たんですか?」


意味深に上野が微笑み、綾をじっと見ている。

綾が上野の視線を受け止めたと同時に会場がまた騒がしくなり、ドラム音とともに熱気を帯び始めた。

アッシュの一曲目が始まった。
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