未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
「帰るよ」
「――」
これで最後だなんて思いたくない。
自分の心をなだめるように自分の胸に手をあててみる。
言わなきゃいけないことがあるよな。
俺がまだ伝えてなかった言葉。
「俺は諦めないよ。綾のこと好きだから最後にしたくない」
振り返って見ると、綾の切なげな瞳と小刻みに震える肩があった。
引き寄せたくなる。
でも、グッと堪えた。
「最後にしたくないから、今日は綾の言うとおりに帰るよ」
俺にはそう言うのが精一杯だった。
訊きたいことが胸にいっぱい押し寄せてきている。
でもそれをこの場で口にしてしまえば、感情の波に乗って強大な津波となり、綾の意思や本音さえも飲み込んで、俺の気が済むところまで追いやってしまうだろう。
でもそれはいちばん俺の望んでいないことだ。
エレベーターの中で、グルグルと思考を巡らせる。
俺を傷付けてでも守りたいものってなんなんだろう。
あの綾にそう言わせてしまうものがあることに俺は傷付いていた。