未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2
「あ、ごめん」
俺は深々と頭を下げ、手を拝むように合わせて額に付けた。
その姿を見た綾の小さな笑い声が耳に届く。
「忘れものって?」
「車のキー。車まで行って気付いた」
「車のキー?」
「うん。落ちてなかった?」
「気が付かなかったけれど――」
言いながら綾が部屋のほうへ戻っていく。
俺は入っていいのかわからず、ドアが閉まらないよう掴んだまま、その場に立っていた。
そんな俺に気付き、綾が振り返って微笑む。
「こら、自分でも探しなさいよ」
その声は優しく、今の俺には心の奥のほうまで響いてきた。
「あ、すんません」
俺はぺこっと頭を下げ、中へ入っていった。
「あ、これでしょう?」
綾はさっきまでアイロンを掛けていたテーブルの下を覗き込んでそれを拾い上げ、レスポールのキーホルダーが付いたそれを俺に見せた。
「そう!! それ」
「ごめんなさい。きっとわたしが落としたんだわ」
とても済まなそうな表情をして、それを俺に差し出す。
俺は心のなかでキーに感謝していた。
あんな言葉を言われたまま、帰ることにならなくてよかったと。