廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『遠藤!!また貴様か!』
中国大陸に着いた部隊は、実戦に備えて毎日軍事演習を行っていた。
兵隊の多くは、徴兵前から学校での軍事演習を行っており、基礎が叩きこまれていたが、
悟は15歳で家を出て、青島や朝鮮を放浪していたため、彼らにいつも遅れをとっていた。
そもそも悟が家を出た理由は、義父との折り合いが悪かったことと、中学で強制される軍事演習に苦痛を感じていたからである。
悟は動作が遅く、いつも上官から殴られていた。
身体が大きいため、数十キロもある砲台を運ばされ、連日行軍に次ぐ行軍であった。
中国軍の敵兵は、ゲリラ戦を仕掛けてくる。
そのため二十四時間気が抜けない状態が続いた。
食料不足と疲労、真冬の寒さに体調を崩す兵隊が続出。
悟もその一人だった。