She Loves Me
「はーい、イガラシです」
一瞬だけ、驚いた顔を見せたその人は少しおどけてそう言った。
本当の本当に、あの人がイガラシだった。
と、いうか…
わけのわからないところで目立ってしまった…
と、いうか…
ついさっき、イガラシとは関わらないって決めたところなのに…
ひとり自己嫌悪に陥っていると、山口先生がなぜか嬉しそうにしている。
「五十嵐、有名じゃんか。羨ましいな、オイ。じゃ、お前の席は委員長の隣だからなー」
おいっす、だかうっす、だか呟いたイガラシがあたしの隣の席に腰掛けた。
さっきのはどうやら返事だったらしい。
と、いうか…
「隣の席って…」
普通に、真面目に生きてきたのに…
あたしが何をやったっていうのよ…
目を合わさないようにしよう。
心の中で誓いをたてた。