She Loves Me
「はい、先生。プリントです」
集めたプリントを持って職員室に行くと、山口先生は呑気にコーヒーを啜っていた。
「さすが委員長。仕事がはえーな」
対して感心もしてなさそうに言いながら、プリントを受け取った山口先生は、パラパラと中身を確認する。
「1枚足りませんけど」
1枚だけ何度数えても、何度呼びかけても集まりきらなかったのだ。
「ああ。それたぶん五十嵐のだな。あいつ今日まだ学校来てねぇしな」
イガラシ?
頭に浮かんだハテナを読み取ったのか、山口先生は笑って続ける。
「見てみろよ、委員長。希望進路希望先がお嫁さんだってよ」
プリントを指差し、大口を開けて笑っている。
「お前ら若いヤツらはさー、なんでもいいんだよ。やりたいこと、やったもん勝ちだからな。委員長も、五十嵐も」
だから、そのイガラシという人物は誰なんだろうか。