She Loves Me
「アドレス教えて」
たったそれだけのことを言う勇気がないあたしは弱虫だ。
イガラシにバレないように、小さくため息をついた。
相変わらず、イガラシは眠そうにあたしの一歩前を歩いてる。
「つーかさ、」
思わずイガラシの背中に見とれてしまっていて、話しかけられたことに気付かなかった。
「俺、せっかくいいんちょーと仲良しになったのにアドレス知らないよー。悲しいよー。いいんちょーは秘密主義だよー」
拗ねたような口調のイガラシにビックリして、ことばの意味が理解できない。