She Loves Me
「あの……」
やっとの思いで絞り出した声にイガラシが気付いてくれた。
「沙織は、何があっても俺に泣き顔なんて見せたことなかったから」
言わなくてもわかる、心配なんだ、のイガラシの心が伝わってきた。
「幼馴染みだもんね、心配だよね」
好きだから、という言葉はあたしの口からは言えなかった。
「アイス。またいつかね」
そう言って、イガラシに背を向けて歩いてきた横断歩道を戻った。
これで、よかった。
自分にそう言い聞かせて。