She Loves Me
そのまま放課後になっても結局イガラシは来なかった。
こんな時は図書室だ。
心がモヤモヤした時は、なにか本でも読んで落ち着くべきだ。
自分に言い聞かせて、部活に行くタイちゃんにバイバイする。
帰り支度をしていると、生徒にさよならを言いながら教卓に立っていた山口先生と目が合った。
「先生、さようなら」
先生があたしの挨拶に、頷く。
それから、少し考えるように遠くを見つめて、そして言った。
「アイツたぶん学校来てるよ」
「アイツ……?」
一瞬、意味がわからなくて聞き返す。
「教室に来ないのは、俺と顔合わしたくないんだろ」
その言葉ではっとした。
「イガラシ、ですか?先生は、イガラシが沙織さんのことを好きなこと、知ってるんですよね?」
「俺にとっても、沙織にとっても、アイツは可愛い弟みたいなもんだよ」