鈴鹿の最終コーナーを抜けたら…。
今日はレースではない。マシンの調子を見るために、練習日に合わせて、この鈴鹿にマシンを持ち込んだ直人と雅之だったが、ニューマシンへの期待はかくも大きく裏切られてしまった。
「くそったれ。とりあえずリアのダンパーを1つ緩めて、もう2~3周走ってみるか」
直人がそう言うと、雅之が時計を見ながらかぶりをふった。
「だめだ。タイムオーバーだ」
直人も時計を見た。練習走行に許された時間はあと10分。直す時間はない。
「もう一周、無理やりアタックしてみれば?」
雅之はそう言ったが、今度は直人が首を横に振った。
「やめとく。このマシンを壊しちまったら終わりだ」
直人と雅之は少し肩を落として、とぼとぼと帰り支度を始めた。もう3月も終わろうとしていた。まもなくシーズンが始まる。年末に組みあがったこのマシンは、ポテンシャルは見え隠れするのだが、じゃじゃ馬もいいところで、バランスが悪すぎる。この鈴鹿でもS字・逆バンク・ダンロップと続くセクションでは結構な速さなのだが、そこから先はどうにもならない。考えることは山盛りたくさん。やっていけることは、たったひとつづつ。直人は酷くあせっていた。
”マシンの調整不足なのか?それとも俺のウデなのか…“
自問してみる。しかし答えは見つからない。気持ちはすっかり海の底だった。
「帰るか…」
そう言って、直人は移動用のトラックの荷台にマシンを積み込もうとした。ちょうどその時だった。
「あれ?お二人さん、もうおかえりかい?」
聞き覚えのある声に2人は振り返ると、そこには心強い味方が立っていた。
「米本さん!」
立っていたのは、米本一樹というプロ・ライダーだった。高校中退後、単身でイタリアに渡った彼は、イタリア国内の125ccのレースを勝ちまくり、3年後に帰国。そして現在、国内ではトップの全日本500ccクラスで常に優勝争いをしている男である。直人は米本に出会った時の事を思い出していた。
「くそったれ。とりあえずリアのダンパーを1つ緩めて、もう2~3周走ってみるか」
直人がそう言うと、雅之が時計を見ながらかぶりをふった。
「だめだ。タイムオーバーだ」
直人も時計を見た。練習走行に許された時間はあと10分。直す時間はない。
「もう一周、無理やりアタックしてみれば?」
雅之はそう言ったが、今度は直人が首を横に振った。
「やめとく。このマシンを壊しちまったら終わりだ」
直人と雅之は少し肩を落として、とぼとぼと帰り支度を始めた。もう3月も終わろうとしていた。まもなくシーズンが始まる。年末に組みあがったこのマシンは、ポテンシャルは見え隠れするのだが、じゃじゃ馬もいいところで、バランスが悪すぎる。この鈴鹿でもS字・逆バンク・ダンロップと続くセクションでは結構な速さなのだが、そこから先はどうにもならない。考えることは山盛りたくさん。やっていけることは、たったひとつづつ。直人は酷くあせっていた。
”マシンの調整不足なのか?それとも俺のウデなのか…“
自問してみる。しかし答えは見つからない。気持ちはすっかり海の底だった。
「帰るか…」
そう言って、直人は移動用のトラックの荷台にマシンを積み込もうとした。ちょうどその時だった。
「あれ?お二人さん、もうおかえりかい?」
聞き覚えのある声に2人は振り返ると、そこには心強い味方が立っていた。
「米本さん!」
立っていたのは、米本一樹というプロ・ライダーだった。高校中退後、単身でイタリアに渡った彼は、イタリア国内の125ccのレースを勝ちまくり、3年後に帰国。そして現在、国内ではトップの全日本500ccクラスで常に優勝争いをしている男である。直人は米本に出会った時の事を思い出していた。