鈴鹿の最終コーナーを抜けたら…。
流れてくるニュース、2人は動きをとめたまま、画面に集中していた。鈴鹿サーキット、直人も幾度となく駆けぬけた最終コーナー。画面の端から米本の真っ赤なマシンが飛び込んでくる。ややオーバースピード。それでも米本は最終コーナーの立ちあがりを考えて、無理にアクセルを開けているのがわかる。マシンの動きにあわせてカメラがパンする。マシンの挙動がおかしい。グリップ力を失ったリアタイヤが、わずかな白煙をあげている。遠心力がマシンをコースの外側へと引き込もうとしているのだ。米本が必死でマシンを抑え込もうとしているのが伝わってくる。しかし結末は突然やってきた。流れていたリアタイヤが突然グリップを取り戻す。その途端、マシンがまるでロデオのように暴れる。いわゆるハイサイド…。完全にコントロールを失ったマシンと米本の身体がコースから飛び出し、小石が敷きつめられたグラベルを通り越していく。直人は目を逸らすことができなかった。米本が最後の最後までマシンを立て直そうとしていたからだった。マシンが完全に横倒しになり、火花をあげているというのに、ヘルメットの奥にある米本の目は、あきらめようとはしていなかった。だが、米本はそのままマシンと一緒にタイヤバリアに激突していった。その衝撃によってマシンから引きはがされた米本は、うつぶせになったまま、ピクリとも動かないでいた。あわててコースマーシャルが飛んでくる。まさに最悪の状況だった。
「……・」
直人はすべてわかっていた。転倒の理由。いやそれだけではない。すべて…、そう。この結末も…。
すさまじい映像がくり返し流される。無意識のうちに雅之は、テレビの電源を消そうとしていた。しかし直人はそれを無言で制した。すべてがわかっていたからこそ、直人はその言葉を待たなければならなかった。すべてを見届けなくてはならなかった。この感覚は前に一度だけ味わったことがあった。F1でアイルトン・セナが事故を起こした時だ。あの時も今とまったく同じ感覚だった。
「……・」
直人はすべてわかっていた。転倒の理由。いやそれだけではない。すべて…、そう。この結末も…。
すさまじい映像がくり返し流される。無意識のうちに雅之は、テレビの電源を消そうとしていた。しかし直人はそれを無言で制した。すべてがわかっていたからこそ、直人はその言葉を待たなければならなかった。すべてを見届けなくてはならなかった。この感覚は前に一度だけ味わったことがあった。F1でアイルトン・セナが事故を起こした時だ。あの時も今とまったく同じ感覚だった。