鈴鹿の最終コーナーを抜けたら…。
外はいやな雨が降り続いていた。直人は独り、部屋に閉じこもってマシンの整備を続けていた。あの夜から3日が過ぎていた。あれ以来、玲美の姿はおろか、声さえ聞いていない。この部屋に彼女の笑い声がしないのは、どれぐらいぶりだろう。直人は思い返していた。今、直人の部屋で響くのは、彼女の声ではなく、雨もりの寂しい音だけである。本音を言えば、彼女と連絡が取りたかった。いつからだろう、気がつけば彼女の家の電話番号は暗記してしまっていた。でも、直人は電話を掛けることはおろか、自分のすぐ横にある電話を取ることすらできなかった。彼女に別れを告げられるのが怖かった…。
「くそっ…」
自分が情けなかった。そこにノックの音が響いて、雅之が現れた。ここしばらくなかった、いつもの光景。ただ、ひとつ違うのは、雅之が真紀ちゃんを連れていたことだった。雅之はこの部屋に入り浸っていたが、真紀ちゃんがこの部屋に来るのは始めてだった。直人は少し戸惑いながら、2人のために冷蔵庫からペットボトルのウーロン茶を取り出し、コップと一緒に2人の前に置いた。
「汚いところで、びっくりしたでしょ…」
直人はそう言った。今は独りでいたかった直人の、精一杯の強がりであった。
「どうしたんだよ、2人そろって。もっと他にいくところがあるんじゃないのかい」
「真紀がどうしてもお前に会いたいっていうからさ」
雅之の言葉は、いつもの奴らしい口調ではなく、重々しい言葉だった。
「玲美ちゃんのことでね…」
そう付け加えた雅之の顔は、いつになく真剣だった。もちろん真紀ちゃんもである。
「うん。それで…」
直人には心の準備が全くできていなかった。でも男の悪いクセのようなものが、直人に強がりなセリフを吐かせる。真紀ちゃんは前置きもなく言った。
「武田くんはレースと玲美、どっちをとるの?」
「くそっ…」
自分が情けなかった。そこにノックの音が響いて、雅之が現れた。ここしばらくなかった、いつもの光景。ただ、ひとつ違うのは、雅之が真紀ちゃんを連れていたことだった。雅之はこの部屋に入り浸っていたが、真紀ちゃんがこの部屋に来るのは始めてだった。直人は少し戸惑いながら、2人のために冷蔵庫からペットボトルのウーロン茶を取り出し、コップと一緒に2人の前に置いた。
「汚いところで、びっくりしたでしょ…」
直人はそう言った。今は独りでいたかった直人の、精一杯の強がりであった。
「どうしたんだよ、2人そろって。もっと他にいくところがあるんじゃないのかい」
「真紀がどうしてもお前に会いたいっていうからさ」
雅之の言葉は、いつもの奴らしい口調ではなく、重々しい言葉だった。
「玲美ちゃんのことでね…」
そう付け加えた雅之の顔は、いつになく真剣だった。もちろん真紀ちゃんもである。
「うん。それで…」
直人には心の準備が全くできていなかった。でも男の悪いクセのようなものが、直人に強がりなセリフを吐かせる。真紀ちゃんは前置きもなく言った。
「武田くんはレースと玲美、どっちをとるの?」