鈴鹿の最終コーナーを抜けたら…。
”よし…”
そう呟いて気合いを入れると、直人はガレージを後にしてマーシャルの指示のもと、マシンをグリッドに移動して最終調整を始めた。今日は本当に何の問題もなかった。すべてよし。あとはギアを入れてアクセルを開けるだけだった。雨がどんどん強くなっていく。体は濡れるに任せるしかない。直人はバイクにまたがった。すぐ横の2番グリッドからで中野がすさまじい形相でこっちを睨んでいる。
”上等だ。今の俺に怖いものはない…。もう失うものなど何もないのだから…”
思いながら直人は、静かに時の間を漂っていた。その間にもレースのスタートが近づいていた。グリッド上からメカニックが退避する。20台のマシンが、緑色のランプに向けて、それぞれの咆哮をあげている。もちろん直人のもとのこのマシンも…。時は静かに流れ続ける。それでも直人は空を見上げていた。目を閉じているのか、開けているのかさえ分からない意識の狭間に直人はいた。一瞬の空白…。何かを感じる…。直人は空を見るのをやめ、ただ一点シグナルを見た。レッド・ランプが光る。気がつかないうちに、意識を集中していた。一瞬のちのグリーン・ランプとともに、アクセルを目一杯開いた。すごいスピードの世界と、スローな動きの世界の狭間で直人と直人のマシンは揺れ動いている。誰よりも先にと思いつつ、第1コーナーへと侵入し、2コーナー、S字へと向かっていた。
直人はいつのまにかマシンを動かそうという気持ちを頭の中から消し去っていた。頭の中では、3日前の最後のセリフがちらついている。あの時直人は、部屋を去ろうとした雅之と真紀にこう言っていた。
「もし、玲美に会うことがあったなら、鈴鹿の最終コーナーで待っててくれと伝えてくれ。もし君がそこにいなかったら…、俺は君のことを忘れると…」
そう呟いて気合いを入れると、直人はガレージを後にしてマーシャルの指示のもと、マシンをグリッドに移動して最終調整を始めた。今日は本当に何の問題もなかった。すべてよし。あとはギアを入れてアクセルを開けるだけだった。雨がどんどん強くなっていく。体は濡れるに任せるしかない。直人はバイクにまたがった。すぐ横の2番グリッドからで中野がすさまじい形相でこっちを睨んでいる。
”上等だ。今の俺に怖いものはない…。もう失うものなど何もないのだから…”
思いながら直人は、静かに時の間を漂っていた。その間にもレースのスタートが近づいていた。グリッド上からメカニックが退避する。20台のマシンが、緑色のランプに向けて、それぞれの咆哮をあげている。もちろん直人のもとのこのマシンも…。時は静かに流れ続ける。それでも直人は空を見上げていた。目を閉じているのか、開けているのかさえ分からない意識の狭間に直人はいた。一瞬の空白…。何かを感じる…。直人は空を見るのをやめ、ただ一点シグナルを見た。レッド・ランプが光る。気がつかないうちに、意識を集中していた。一瞬のちのグリーン・ランプとともに、アクセルを目一杯開いた。すごいスピードの世界と、スローな動きの世界の狭間で直人と直人のマシンは揺れ動いている。誰よりも先にと思いつつ、第1コーナーへと侵入し、2コーナー、S字へと向かっていた。
直人はいつのまにかマシンを動かそうという気持ちを頭の中から消し去っていた。頭の中では、3日前の最後のセリフがちらついている。あの時直人は、部屋を去ろうとした雅之と真紀にこう言っていた。
「もし、玲美に会うことがあったなら、鈴鹿の最終コーナーで待っててくれと伝えてくれ。もし君がそこにいなかったら…、俺は君のことを忘れると…」