ずっと好きだと言えなかった



「……え、っと」



もごもごと言う。
誰。
誰。
聞きたいけど聞けない。
少しだけ電話越しに微妙な空気になる。
そんなとき電話の相手から話を切り出してくれた。



「このケータイ、片瀬の?」

「は、はい」

「やっぱり。音楽室に置き忘れてたよ」



ああ。
そう言えば音楽の時間だ。
ケータイが邪魔だからそこらへんに置いてたんだっけ。
電話の声は低い。
きっと男の子。
学校内に置き忘れたケータイに気づいてくれたと言うことは、同じ学校の生徒か。
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