ずっと好きだと言えなかった
そしてなにかを言うわけでなく、千葉君はわたしの手を再度とる。今度は取るんじゃなくて繋がれた。



「………送る」



そう言って歩き出す。玄関口に戻る彼に優しいと思った。問い詰めるわけもなくただ傍にいてくれた。小さく“ごめん”と呟かれた気がする。わたしのほうが“ごめん”

その優しさが辛かった。千葉君を突き放したのはわたしなのに。呆気なく壁は壊れて優しさに寄り添う自分が醜く思えた。
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