ずっと好きだと言えなかった
戻るって友達のところ?
と思ったところで鞄の中の存在を思い出す。



「あ、ま、待って」



あたふたとカバンのなかから袋を取り出す。



「あの、き、昨日のお礼…」



本当は渡そうか迷った。
でも渡さないと結局はゴミ箱か、わたしの胃袋行き。
ならお礼として渡したい。
どうせ要らないと思われたら彼の手でゴミ箱行きになる。
わたしが捨てるか彼が捨てるか、ただそれだけだ。



「つ、作ってきたの…」



マフィンを差し出す。
緊張からかぷるぷる震える指先。
お、治まれ。
ただマフィンを千葉君に“お礼”として渡すだけなんだから…!
ふ、深い意味はない。
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