ずっと好きだと言えなかった



***



「―――セ、セナちゃんがぁ〜」

「い、痛いですって美希さん」

「はじめちゃんなんか禿げちゃえ!」

「さ、さいきん一段と凶暴化しましたね」



眼鏡をかけた少年の髪をぐいぐい引っ張るのはゆるふわ系の美少女。セナの走り去って行った方を見て目を潤まし少年に八つ当たり。片瀬セナはこの少女が可愛がる後輩だった。



「ど、どうしよう。追いかける?」

「……僕等の足で追い付けるのなら」

「……」

「……」



2人同時に黙りこむ。それもその筈。このカップルはスゴく運動音痴で足が遅い。彼等の短距離は、長距離になる。そして互いに足が遅いことも知っていた。
< 78 / 220 >

この作品をシェア

pagetop