紅いイヤホン【完】
「…ここ、だ。」
勢いだけで来ちゃったけど、
…見えるんですが、既にかおるさんが…。
服を片手にお客さんと話してる。
………好き。
胸の奥がきゅぅっ…って、なんか苦しい。
お店に来たのは2回目かな。一度目は付き合って1ヶ月くらいの頃に仕事してるかおるさんが見たくて来た。
でも、仕事でも女の人の接客してるのを見るのが嫌で、もう絶対来ない!!って、心に誓ったっけ…。
ゆっくり足を進めて"quest"ークエストーへ向かった。
ドアを押し開けて店内に踏み入る。
「いらっしゃいま………え、紫衣…?」
……うわ、早々に気づかれた…。
どうしよ、なんて言ったらいいかわかんない…!!
「紫衣が店来るなんて珍しいやん。どうしたん?俺に用事か?」
作業してた手を止めて少し嬉しそうにあたしに聞く。
「あー…いや、えっと、ちょっとリュウさんに…。」
「…リュウ?あいつに何の用や。」
あー…完全に不機嫌になっちゃった。
あたし、想われてる?
いや、単にあたしが自分のモノだから?