紅いイヤホン【完】
「あーこれええですよねぇ…俺買おうか思いましたもん。」
「え、じゃあ買って上野さんにプレゼントしちゃおっかなー(笑)」
接客してるかおるさん。
こっちから顔は見えないけど、お客さんの方の女の子は私より年上に見える。
…その人が元カノ?
上野さんって言ってる時点で違うのに。なんだかもう全部を疑ってしまいたくなった。
年上。年下。
それに悩んだのは今日だけじゃないけど…ここがあたし達の限界だったのかな。
…いや、限界とかじゃないか…。
あたしから、他の人に。寄りによって元カノに心移りしただけだもんね。
あー…情けな。
情けなくてもう涙も出ない。
「…お、紫衣。話終わったんか?」
いつのまにか会計が終わっていてあたしに気づく。
キャップを後ろにして被る姿、大好きだったな。
ぼんやりと関係ないことを考えながら言葉を探す。
「…うん。だから、かおるさんとの話も終わらせなきゃね。」