紅いイヤホン【完】
…違う。
違うじゃん…っ
「かおるさんは元カノと寄り戻したいんでしょ?!もうあたしなんか好きじゃないんでしょ?嘘言わないでよ…!」
「ほんまやって!俺は明里…元カノに未練なんて無いわ‼紫衣が何思っとんのかわからんけど、俺はずっと、紫衣だけや…!!」
いつのまにかかおるさんも立ち上がっていて
逆にあたしが耳を塞いでしゃがみこんだ。
それでも、大好きな声は耳にはいってきて…
「紫衣…好きや。お前が他のやつ好きになっても、俺はお前を手放す気なんてないねん…!」
本当?
その言葉、あたしは信じていいの…?
かおるさんを
忘れなくていいの……?
「じゃあ、なん、で…」
恐る恐る、あたしの前に座り込んだ彼の顔を見て言った。
「…ん?」
「どうしてあたしのメール見てため息ついたの?なんで電話出てくんなかったの?」
すごい…すごいショックだったんだよ。
「何のことや…?」
涙を拭いながら問うかおるさん。
「…2日前、カフェにいるかおるさんを見つけたの…。」
少し黙り込んで、口を開いた。
「…それは、メールは紫衣のことやない。メール…2件来とってな、1件目が明里やったんや。その後紫衣のメール見た。」
…そんな。
「電話も…ホンマは出たかったけど、紫衣の声聞いたら浮かれてその後の仕事に身入らんと思て…っ」
形の良い唇から紡ぎ出されるコトバ。
…じゃあ、あたしの…
「勘違い…」
「そうや、俺は紫衣以外興味あらへん。」