ラストコール
彼女の笑顔を思い出してしまう所為だろう。
彼女の笑顔がじんわりと胸の中に広がっていく。中学時代、本当に後悔したこと。山程あるうちの一つが解放されていく感じがした。
ぽふっ、ベッドに横になる。
この電話はこの為にかかってきたのかな。
これで…電話の奇跡は終わった。彼女の存在を感じられない日々に戻るのか。
電話が切れた後だと分かっているのに、通話終了ボタンが押せない。もう繋がることはないって分かっているのだけれど…
もう少しだけ、余韻に浸っていても罰はないだろう。
「残り0」と表示された携帯の画面を見つめると、切れた筈なのに通話時間が止まってないのに気づいた。
まさかっ、と思い再び耳に当てる。すると、携帯から微かに聞こえてきたノイズ音。
故障か?と思ったが、さっきまで普通に使えたんだそんな訳がないと拳を握る。耳をすまし、聞こえてきたのは…。
『誠ちゃん!』
彼女があの頃の僕を呼ぶ声だった。
(いつもの穏やか声ではなく、切羽詰まった声は、)
("あの日"聞いた声だった)
『誠ちゃん!!』
電話口から聞こえた彼女の声に鳥肌がたった。先ほどまで聞いていた声ではなく、切羽詰まったようなその声は…"あの日"。初めて聞いた声だった。
彼女は寝たはずだ。それに深夜の事ではない。今この電話は、"あの日"とつながっている?
目を閉じ、全神経を電話に集中させる。微かに聞こえた雨音にぎぃいっと耳障りな高音。間違いない、間違えるはずがない。"あの日"だ。
僕の声がした。彼女の名前を呼んでいる。心臓が今までない以上に早打ち、息が少し苦しくなる。眩暈さえしてきた。携帯が手から落ちそうになるのをどうにか持ち直す。ああ、コレは。あの時か。
全部鮮明に思い出せる。
呼んでも返事をしない彼女に僕は近づく。耳障りな音をたて帰り道を歩く僕達に目掛けてぶつかってきたトラックは灰色の車体を鮮やかな赤で彩っている。
赤。彼女の"血"で。
道路に倒れたままの彼女の背中が目に浮かぶ。彼女から流れる大量の血に一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
彼女の近づき、名前を呼ぶ。倒れている身体を少し抱き起こせば、はぁはぁと荒い呼吸にもかかわらず弱々しく笑っている彼女。
『誠ちゃ、ん。大丈夫…?』
『僕の事より…!大丈夫かっ?しっかりしろっ…!!!』
『…だいじょーぶ』
無理して笑う彼女にどこがだと言おうとしたとき周りの人々が動き始めた。
警察、連絡、救急車。頭上を飛び交う言葉達に僕は気付きもしなかった。ただ、ショックが大きすぎて。
鮮明に、脳裏に浮かぶその光景は、そう。"あの日"。"僕"が。"僕達"が。彼女を失った日だった。
彼女の笑顔がじんわりと胸の中に広がっていく。中学時代、本当に後悔したこと。山程あるうちの一つが解放されていく感じがした。
ぽふっ、ベッドに横になる。
この電話はこの為にかかってきたのかな。
これで…電話の奇跡は終わった。彼女の存在を感じられない日々に戻るのか。
電話が切れた後だと分かっているのに、通話終了ボタンが押せない。もう繋がることはないって分かっているのだけれど…
もう少しだけ、余韻に浸っていても罰はないだろう。
「残り0」と表示された携帯の画面を見つめると、切れた筈なのに通話時間が止まってないのに気づいた。
まさかっ、と思い再び耳に当てる。すると、携帯から微かに聞こえてきたノイズ音。
故障か?と思ったが、さっきまで普通に使えたんだそんな訳がないと拳を握る。耳をすまし、聞こえてきたのは…。
『誠ちゃん!』
彼女があの頃の僕を呼ぶ声だった。
(いつもの穏やか声ではなく、切羽詰まった声は、)
("あの日"聞いた声だった)
『誠ちゃん!!』
電話口から聞こえた彼女の声に鳥肌がたった。先ほどまで聞いていた声ではなく、切羽詰まったようなその声は…"あの日"。初めて聞いた声だった。
彼女は寝たはずだ。それに深夜の事ではない。今この電話は、"あの日"とつながっている?
目を閉じ、全神経を電話に集中させる。微かに聞こえた雨音にぎぃいっと耳障りな高音。間違いない、間違えるはずがない。"あの日"だ。
僕の声がした。彼女の名前を呼んでいる。心臓が今までない以上に早打ち、息が少し苦しくなる。眩暈さえしてきた。携帯が手から落ちそうになるのをどうにか持ち直す。ああ、コレは。あの時か。
全部鮮明に思い出せる。
呼んでも返事をしない彼女に僕は近づく。耳障りな音をたて帰り道を歩く僕達に目掛けてぶつかってきたトラックは灰色の車体を鮮やかな赤で彩っている。
赤。彼女の"血"で。
道路に倒れたままの彼女の背中が目に浮かぶ。彼女から流れる大量の血に一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
彼女の近づき、名前を呼ぶ。倒れている身体を少し抱き起こせば、はぁはぁと荒い呼吸にもかかわらず弱々しく笑っている彼女。
『誠ちゃ、ん。大丈夫…?』
『僕の事より…!大丈夫かっ?しっかりしろっ…!!!』
『…だいじょーぶ』
無理して笑う彼女にどこがだと言おうとしたとき周りの人々が動き始めた。
警察、連絡、救急車。頭上を飛び交う言葉達に僕は気付きもしなかった。ただ、ショックが大きすぎて。
鮮明に、脳裏に浮かぶその光景は、そう。"あの日"。"僕"が。"僕達"が。彼女を失った日だった。