くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
第1話 野島勇人
~告白
「そんな明石先輩だから、あたしは好きなんですよ」
……あちゃ~言っちゃったよ、あたしのバカバカ!
油彩画の絵の具を溶く油を瓶から注ごうとした明石 透(あかし とおる)先輩は、あたしを見て何を言ってるんだと理解不能な顔をしてた。
そりゃあそうでしょ、あたしは今まで明石先輩には好意のひとかけらさえ見せないように努力してたんだから。
いくら苦しくても、彼にだけは悟られないように。
気まずい空気があたしたちの間を流れ、まだ他の部員が来ていない美術室が沈黙する。
入学式で一目惚れしてから3ヶ月以上ずっと片思い。
明石先輩が所属してると知ったから絵が苦手でも美術部に入ったんだけど、まさか今日こんな機会が訪れたなんて。
明石先輩は優しかったけど、あたしに対しても他の部員に対しても態度は一貫して変わらない。
だから望みがあるかなんてわかんなかったけど。
今日明石先輩と一対一で初めてお話しできたから、個人的な話題も振られて最近スランプ気味な事を言ってた。
いろいろ励ましているうちになぜかそんなセリフを口にしてたわけ。