くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
追いかけっこしているうちに、海岸でもかなり外湾に近い部分に来ているなんて気づけなかった。



「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」


ふざけたことに、野島は岩の上で手を叩いてる。


「ぜえ、はあ……う……歌うなっ!」


10分は走りつづけてたから、運動不足気味なあたしはもうそれだけで息が上がって心臓がバクバク言って苦しいし、汗が滝のように流れてせっかくのオシャレな服の生地が汗を吸って肌に纏わりつく。


砂浜は平らなコンクリートの道より足腰に負担がかかるから、普通に走るよりゆうに倍は疲れたと思う。


あたしはもうふらふらで、軽く曲げた膝に手を載せて荒い息を吐いてた。


「鬼さん、こっちこっち!」


野島が岩の上で手を振ってるけど、こちらから見ればカンタンに登れる場所が丸見えだわよ。


あたしは息を整えてからニヤリと笑い、そちらを目指すべく一気に駆け出した。


「鈴本さん、ダメだ! そこは……そこの下は!」


明石先輩が珍しく慌てた様子であたしに向かい叫んだけど、時すでに遅し。


あたしが一気に駆け上がった岩は二人分の体重を支えきれず、脆く崩れてあたしと野島は海へ真っ逆さまに落ちた。
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