くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
足元の岩が何だかぐらついてるな、と思った刹那にひび割れて一瞬で崩れ落ちたから、頭が真っ白になって何をどうしようとかなんて考えられない。


やだ、あたし泳げないのに!


数メートル下にある海面がぐんぐんと近づいた時一瞬そう思ったけど、後は手足を縮めて目をつぶるだけが精一杯だった。


先輩が呼ぶ声が聴こえた瞬間、水の圧力が全身にかかって衝撃に息苦しくなる。


苦しい……


助けて先輩!


手足を動かそうと力を入れて、気がついた。


自分の体が安定して浮いてる事に。


そして、力強い何かに捕らわれてる事に。


なに……?誰かなの??


水中で目を開けるのが怖いあたしは確認できなかったけど、不安で仕方がない中で、そのぬくもりと確かな存在感はあたしを安心させてくれた。


グン、と上に引っ張り上げられる感覚があって、しばらくそれに従ったら、ほどなく海面から顔が出せた。


海の中にいたのはたぶん一分といなかったと思うけど、水を飲んでもいないのに苦しくて咳き込んだ。


「大丈夫か? 焦らずにゆっくりと息を吐くんだ……ゆっくり、ゆっくりとな」


すぐそばで聴こえた声の通りに呼吸したら、落ち着いて楽になった。
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