くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「もう平気か?」


「あ、うん。大丈夫……って! あんたはああっ!」


波間の潮騒に混じって見事な頬を張る音が響いた。


あたしを抱きかかえてたのが、他でもないこの状況を作り出した犯人の野島だったから。


あたしは目を開いてやつの顔が視界に入った瞬間に問答無用でやつの頬を張った。


「いってえ! 助けてやったのにそれはないだろが」


「うるさい! 誰のせいでこんなコトになったと思ってんのよ!」


あたしは心底腹が立ってて、素直に助けられたお礼なんか言えやしないっての。


さっきからかわれたムカつきもあったし。


「ふん! なら、いいさ。勝手に泳いで帰りな」


野島はまたいじけたのか、あたしを離して泳ぎだした……って!ちょっと待てえい!


あたしはカナヅチだってば!


だけど、野島の手前で泳げないなんてバラしたくないし……。


あたしは野島が手を離した瞬間、手足を広げてとにかく水を掻いてみた。


……けど、思ったよりも強い波に翻弄されてうまく顔を出すことさえ難しい。


あっぷあっぷ言いながらとにかく岸を目指そうと野島の後を追おうとしたけど、いつの間にかヤツの姿が影も形も見えなくなった。
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